日本語教師1年目です。
日本語教師になって読んだ本を書きます。
日本語教育のためのコミュニケーション研究|野田尚史編
日本語のコミュニケーションについて、複数の日本語教師、教授の研究が一冊の本になっています。
日本語教育のためのコミュニケーション研究
この本、とても面白かったです!
主に文法積み上げ式授業への疑問、コミュニケーションを意識した授業の工夫などが書かれてあります。
『みんなのにほんご』ばかりやっててもいけないな~という気持ちに。w
どの初級の日本語の教科書も文法中心なので、コミュニケーションという点ではあまり実践的ではないということがわかりました。
目次は下記です。
- 日本語教育に必要なコミュニケーション研究
- 非母語話者にはむずかしい母語話者の日本語コミュニケーション
- 日本語教師には見えない母語話者の日本語コミュニケーション
- 母語話者には意識できない日本語会話のコミュニケーション
- 非母語話者の日本語コミュニケーションの問題点
- 非母語話者の日本語コミュニケーションの工夫
- 非母語話者の日本語コミュニケーション能力
- コミュニケーションのための日本語教育の方法
- 日本語のコミュニケーション教育を阻む要因
- 日本語教師に求められるコミュニケーション教育能力
特に面白かった一つの研究を紹介します。
『みんなのにほんご』17課に「~ないでください」という文型があります。
例文は
- 「今晩はお風呂に入らないでください。」
- 「ここで写真を撮らないでください。」
「禁止」の機能ですね。(※「心配しないでください。」という「配慮」の例文も急に少しだけ出てくる。)
そこで病院と美術館で実際の発話データを調査したそうです。
すると・・・現実の場面では「~ないでください」は全く使用されていないことが分かったそう。
実際には、
- 医者:「お風呂はやめといてください」「やめときましょうか」「しないでもらえますか」
- 美術館員:「撮影は禁止されてるんです」「作品に光が良くないもんで」「すいませんが、カメラは・・・」
などの日本語が使われていました。
では実際には「~ないでください」はいつ使われるのか。ドラマ・映画で探したところ、「気にしないで」「気を遣わないで」などの「配慮・気遣い」が多く、「禁止」の機能は多くなかったそう。
また面白いことに「~ないでください」の文型で一般社会人と日本語教師に作文を作らせたところ、大きな隔たりがありました。
一般社会人は「配慮・気遣い」が一番多くドラマ・映画と近似しているのに対して、日本語教師の調査結果は喫煙、駐車、写真撮影などを制する「禁止」のものが全体の80%。
いかに日本語教師の言語感覚が一般のものとずれており、教科書の呪縛に囚われているかということが書かれてありました。
もちろん『みんなのにほんご』など文法中心の教科書も良い点がたくさんありますが、それだけに囚われず他の教え方も学んでいかないといけないなぁと勉強になりました。
他にも興味深い研究ばかりでとても面白かったです。
日本語教育能力検定試験によく出る用語もたくさん出てくるので、日本語教師はまだ未経験だけど試験勉強しているという方にも役立つ本だと思いました。
コミュニケーションのための日本語教育文法|野田尚史編
こちらの本は上記で紹介した『日本語教育のためのコミュニケーション研究』と同じシリーズで、同じ形式、コミュニケーションについて考える本です。
目次は下記です。
- コミュニケーションのための日本語教育文法の設計図(野田尚史)
- コミュニケーションに役立つ日本語教育文法(小林ミナ)
- 日本語学的文法から独立した日本語教育文法(白川博之)
- 学習者の習得を考慮した日本語教育文法(田中真理)
- 学習者の母語を考慮した日本語教育文法(井上優)
- コミュニケーション能力を高める日本語教育文法(フォード丹羽順子)
- 聞くための日本語教育文法(松崎寛)
- 話すための日本語教育文法(山内博之)
- 読むための日本語教育文法(宮谷敦美)
- 書くための日本語教育文法(由井紀久子)
こちらも日本語教師にとって面白い内容ばかりでした。
「正確さ重視の文法より、目的を達成できる文法が重要ではないか」という気づきがたくさんありました。
絵で導入・絵で練習
この本は初級学習に必要な文型の絵と導入例が載っています。
CD-ROMがついているので、パワーポイントに絵を貼り付けることもできて便利です。
『みんなのにほんご』全ての文型があるわけではありませんが、だいたいの重要な文型は網羅されています。
目次は下記です。
- ~をください
- ~から~まで
- ~で(手段・道具)
- ~ませんか
- ~ましょう
- もう・まだ
- ~は~が
- ~に~がいる・ある
- ~がいちばん
- ~より~のほうが
- ~たい
- ~しに
- ~てください
- ~ている
- ~てもいい
- ~てはいけない
- ~て(接続)
- ~てから
- ~くて・~で
- ~ないでください
- ~なければらない
- ~~なくてもいい
- ~るまえに
- ~たり~たり
- ~くなる・~になる
- ~とき
- ~と(一般条件・反復条件)
- ~たとき
- あげる・もらう
- くれる・もらう
- ~てあげる・~てもらう
- ~てくれる・~てもらう
- ~たら(仮定条件)
- ~たら(確定条件・時間)
- ~ても
- ~ことができる・可能
- 見える・聞こえる
- ~しか~な
- ~ながら
- ~ている(習慣)
- 自動詞・他動詞
- ~ている(結果)
- ~てしまう(後悔)
- ~てある
- ~ておく
- ~たほうがいい
- ~かもしれません
- ~たあとで
- ~ないで~する
- ~ば(一般条件・仮定条件)
- ~なら(仮定条件)
- ~ようになる
- 受身(直接)
- 受身(持ち主)
- ~で(原因・理由)
- ~てみる
- さしあげる・いただく
- くださる・いただく
- ~てくる
- ~すぎる
- ~くする・~にする
- ~のに
- ~ところだ
- ~ようだ(状況からの判断)
- 使役
自分で絵を用意しようと思ったらどうしても工作が必要になるので、既に出来上がっているイラスト・絵は役立ちます。
導入を一から考えるときも、このイラストからヒントがもらえます。
【言語のしくみ】シリーズ
言語の概要、特徴が書かれているシリーズ本です。
新米日本語教師の私にとって、とても役立っています。
まず『日本語のしくみ』。
日本語教育能力検定試験で学ぶような内容が易しく書かれています。
日本語母語話者だから気づかない点や、他言語と比べて珍しい点などがわかり、自分が授業するときに気を付けることが学べました。
そして他言語のシリーズもとても勉強になります。
私が特に面白かったのは『ベトナム語のしくみ』です。
ベトナム語のしくみ《新版》 (言葉のしくみ)
現在ベトナム人に授業をしているので、こういう仕組みだからこう間違えるのか~などがわかりました。
以前ベトナム語の文法の本を読みましたが、「わたしは~です。」などの文法は分かっても大枠が掴めませんでした。
この本は日本語との違いなどを交えてベトナム語の概要、仕組みが書かれているので、楽しみながらなんとなく大枠がわかりました。
ちなみに『みんなの日本語』の新出単語を載せるために↓、ベトナム語の単語を調べていますが、単語を見るだけでも日本語とかなり違うなぁ~と実感します。(日本語と逆で、形容する語は後ろにつくなど。)
【言語のしくみ】シリーズには下記の言語があります。
- ロシア語のしくみ
- スペイン語のしくみ
- フランス語のしくみ
- ドイツ語のしくみ
- インドネシア語のしくみ
- ベトナム語のしくみ
- イタリア語のしくみ
- 韓国語のしくみ
- チェコ語のしくみ
- フィンランドのしくみ
- ノルウェー語のしくみ
- オランダ語のしくみ
- ラテン語のしくみ
- スワヒリ語のしくみ
- 中国語のしくみ
- ポルトガル語のしくみ
- 日本語のしくみ
- クロアチア語のしくみ
- トルコ語のしくみ
- デンマーク語のしくみ
- フィリピノ語のしくみ
- 英語のしくみ
- ハンガリー語のしくみ
- 古典ギリシア語のしくみ
- モンゴル語のしくみ
こんなにたくさんあります!
今後も新しい母語の学習者に出会ったら、読んでみようと思っています。
学校にネパールの生徒がいますが、ネパール語がないのが残念です。
心ときめくオキテ破りの日本語教授法
心ときめくオキテ破りの日本語教授法
目次は下記です。
- 日本語教師は接客業である(迫田久美子)
- チームワークで乗り越えろ(戸田淑子)
- 教師は仕掛け人である(志村ゆかり)
- 制約の中で戦え(筒井千絵)
- 笑うもんには福来る(尾崎由美子)
- 感情をシラバスにする(古川敦子)
- 「地雷」をあえて踏む(有田佳代子)
- 演じないロールプレイ(渋谷美紀)
- 教師は何もしなくていい(石黒圭)
- 「楽しい日本語授業」の条件とは何か?(五味政信)
こちらは養成講座で先生に教えてもらった本です。
生徒が眠くならない授業を作るには・・・授業作りの色んなヒントがありました。
こちらもたくさんの日本語教育に携わる先生の読み物がまとめられ、いろんな考えを知ることができました。
まとめ:日本語教師に役立つ本
以上、日本語教師にまつわる本についてでした。
今後も面白い本と出会ったら追加していきます!