2021年6月13日追記。
このページで以前ご紹介した本は、『日本語教育の検定問題を解くー構造と解法ー』『日本語教育の検定問題を解くー頻出事項解説ー』という本に一新されています。
以前、日本語教育能力検定の解説本がAmazon Kindleで読めることをご紹介しました。
同じ著者の『概説』というのがAmazon Kindle Unlimitedにあり、これを読んだのですが
解説本と同じくらい良かったです!正直、この本はあまり期待していなかったのですが、予想外に良かったです。
『日本語教育の検定問題を解く:概説』はどんな本?
著者は新田豊さん
- 早稲田大学大学院 法学研究科 博士課程前期課程修了
- 日本語教育能力検定合格
- 日本語教師養成講座420時間修了(ヒューマンアカデミー横浜校)
この方が、たくさんの本と難しい論文を読んで、過去問を分析されています。
概説の内容
- 区分別の出題状況
- 試験I、Ⅱ、Ⅲ出題状況
- 各分野の重要事項解説
- 付録:お薦め本
区分別の出題状況
区分別というのは、
- 社会・文化・地域
- 言語と社会
- 言語と心理
- 言語と教育
- 言語一般
の区分です。赤本P13~に載っています。
試験3分の1が「5 言語一般-2.日本語の構造」から出ている
などの有益情報が満載です。
試験I、Ⅱ、Ⅲ出題状況
ここではそれぞれの試験の特徴、傾向、時間配分、ポイントが書かれています。
具体的な過去問も絡めてあるので、過去問と一緒に見るとより分かり易いです。
<試験Ⅰ>
異文化受容・適応と第二言語習得はここ4年毎年出ている
国際交流基金(JF)の事業は頻出
などの頻出項目や、問題を作る側の目線での解説が書かれています。
<試験Ⅱ(聴解問題)>
最もパターン化している
検定に特化した準備をしないと、対応力はつかない
聴解問題1~6それぞれの特徴・解き方も詳細に書いてあります。
<試験Ⅲ>
各大問のテーマは5区分のいづれかが中心だが、複数の区分にまたがるものもある
「5 言語一般」が軽く「4 言語と教育」が重い
他にも「~のテーマが目立つ」、「~は過去問を素材に練習する必要がある」など
耳寄り情報が満載です。
また記述問題(小論文)の書き方も詳細に書いてあります。
各分野の重要事項解説
ここの解説がとても面白いのですが、「日本語はどういう言語か」という問いに始まり、
「国際交流基金」まで40個の話題について区分別に話されています。
これが上手く過去問とマッチングしており、いつの間にか過去問4年分の全貌が見えてくるという感じです。
また日本語教師を目指している方であれば、どれも興味深い内容で、記憶に残りやすい話題・書き方がされています。
『日本語教育の検定問題を解く:概説』メリット
体系的:ただの試験のための本ではない
日本語教師を目指すものとして必要な、言語知識が体系的に書かれています。
この検定に受かるためだけでなく、これから言語と付き合っていくものとして知っておくべき知識が得られます。
特に私が感銘を受けたのが、令和元年に出た『認識的モダリティと拘束的モダリティ』についてです。
この問題はとても難しかったのですが、
- 認識的(エピステミック)・・・主観的な話し手の認識を基本にする、蛇の視点
- 拘束的(デオンティック)・・・客観的な事態の把握を基本にする、鳥の視点
という概念を知って、『認識的モダリティと拘束的モダリティ』をより理解することができました。
蛇と鳥の視点というのは、
- 蛇の視点・・・蛇のように地上を進みながら適宜進行方向を変える恣意性の高い言語(日本語)
- 鳥の視点・・・高みの見物のように傍観的に捉える言語(英語)
だそうで、これらの面白い視点を交えながらモダリティの話が展開されています。
尚、著著はこのモダリティの問題について以下の論文をお勧めしています。(WEBで読めます。)
森山 新「日本語の言語的特徴がモダリティに及ぼす影響」(比較日本学研究センター研究 年報第5号所収)
記憶に残りやすいアプローチ
英単語の語源からの単語の意味を説明や、
先ほどの蛇・鳥の視点の話のような言語を学ぶ上で興味深い話を交えながら書かれているので、記憶に残ります。
たまに毒舌が面白い
終始真面目なトーンで書かれてあるのですが、ときたま出る毒舌が面白いです。
「~は間違っています。」「読者をミスリーディングさせています。」
「~しなくても良かったでしょうに。」など結構鋭い言い方がされていて面白いです。笑
私がびっくりしたのは、
この試験では、 誤出題・誤解答があっても訂正せず、後年科目を変え て(Ⅲ →Ⅰ、Ⅰ →Ⅲ)同じ問題番号で別の問題の形で出し直すことで暗黙のうちに誤りを認めることがあります。
(引用:新田 豊. 日本語教育の検定問題を解く: 令和元年度-平成28年度 日本語教育能力検定試験 概説 (Kindle の位置No.2548-2550). Toshiba. Kindle 版.)
ということです。そんな暗黙のルールがあっただなんて。
過去問を解いていても、年によって概念の意味が全く違うことがあるということですね。
要注意です。
2020年最新の統計情報がわかる
- 在留外国人の数
- 留学生の国別、地域別数
- 日本語教育が必要な児童・生徒の母語
などの最新統計情報が載っています。
これらの数は、増減するので過去問での勉強が役に立たない場合があります。
この最新版の情報なら安心です。
『日本語教育の検定問題を解く:概説』デメリット
文字だけで図がない
文字だけで構成されており、図などはありません。
内容は面白いのですが、眠いときに見るのはお勧めしません。
ただ、こんなに情報が多くてKindle Unlimitedで『30日間無料体験』ができるので
かなりお得です。
分かり易いといえど初心者には初読では網羅できない
私はまず1回読みましたが、あと4、5回は読む必要があるなと感じています。
過去問4年分という膨大な知識量なので無理もないですが、1回読んだだけで理解は難しいと思います。
『日本語教育の検定問題を解く:概説』まとめ
日本語教育能力検定の独学勉強にかなりおススメ
日本語教育能力検定の解説が読みたくて、Amazon Kindle Unlimitedを申し込みましたが、この概説が予想外に良かったです。
あと数回読まないと深い理解には至りませんが、Kindleでスマホでも読めるので隙間時間に読み込んでいきたいと思います。
かなりの情報量なので、著者が難しい本や論文をたくさん読んでいるのが分かります。
私もそういう本を読みたいのですが、検定の勉強をしないといけないので、とりあえず検定前まではこちらの概説にお世話になりたいと思います。
検定まであと2ヶ月を切りました。
勉強は難しいですが、この概説本がきっと検定合格への道を助けてくれると思います。
Amazon Kindle Unlimitedで読める過去問解説本、申し込み方法については下記記事をご覧ください。